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今夜の番組チェック

 

いきじごく

 

 

こう言ってしまえば身も蓋もないんですけど、多分価値観の問題なんです、生き地獄。ありふれたもので言えば満員電車、付き添いで行った興味のないアイドル歌手のコンサート、徹夜明けの仕事、おばあちゃんから何度も聞いた話(しかも不快な話)を聞かされるあたりなんかが妥当な線だと思います。どの場合も、共通しているのは抑止力に屈服せざるを得ない状況にNoと言えない日本人っていうのが原因なんです。

 

「小太りな淑女の後ろで痴漢と間違われたら困るから。」手を動かすわけにも行かず渇いた目に潤いを与えられないbad times in the train。

「あなたは不快ですよなんて無為のジェスチャーをあからさまにするわけにも行かないから。」溜め息をやたら漏らすおっさんと30分以上顔を向き合わせにしたまま過ごすbad times in the train。

「みんなノリノリでアイドルの名前叫んで汗までかいてるのに自分だけノってないなんて友達に悪いし。」売れてるのか売れてないのかさっぱりな歌に合わせてスイングしてみたり、前のめりになってるbad times in the concert。

「布団と僕一人になれる場所だけど、そんなこと言えないし。」今一番欲しいのはなんですか、という取材に対して仕方なく二番目に欲しいものを答える目クマだらけのbad times at work。

「もう分かったから、ほんとに分かったから、でも違うから!!犯人じゃないから!!」幾度となく沸き上がる感情を抑えながら、オレオレ詐欺にあった屈辱をとくとくと聞かせられてるbad times in the grandma's house.

 

こうして生き地獄は僕らを不意に襲うわけです。電車を降りれば学校には行けないし、コンサートでうつむいてれば熱狂的なファン達から後ろ指確実だし、眠いと言えばやる気がないと思われるし、ちゃぶ台ひっ倒せば本当は何もしてない良い子なのにイメージがた落ちですよ。そんな状況でも楽しみを見出せる人もいるのかもしれませんが、正直、僕は、無理、です。

 

今まで数々の生き地獄を味わって来ましたが、経験から言って僕が本当に耐えられないのは嗅覚に直接訴えかけて来るものだったりします。良いにおいだったら問題ないんです。その場合は匂いと表記します。

大体、「くさいにおい」って「臭い臭い」って表記するんですよ。見分けがつかないじゃないですか。クサイクサイって。なんか騒いでいるみたいです。そう言えば、フセイン氏の次男坊の名前はクサイ氏でした。日本語学んでればこんなことにはならなかったのに。

 

終電がなくなってしまい、友達に無理を言って車で迎えに来てもらったのに車がやけに臭かった。座敷に上がったら隣のテーブルの人の足が臭かった。言えませんよね。言えませんよね。多分大抵の人は、臭いについて他人に訴えることが出来ないでいるに違いないんです。嗅覚は、こんなにも生活に密接に関わっているのに何故か言えない。言えないんです。

 

「うるさい」と言われても平気なんです。聴覚。

「まずい」と言われても平気なんです。味覚。

「醜い」と言われてもなんとか平気なんです。多分。視覚。

「ごつごつしている」と言われても平気なんです。言われるか分からないですけど。触覚。

 

でも「くさい」と言われるのは何だかショッキングなんです。その場ではギャグに出来ても、多分帰ったら悩んで泣きます。今後その人と会う時は異常に気にしてしまう自分がいると思うんです。自分がそんなんだから他人には言えません。

 

それゆえに言えずに過ごさなくてはならない時間。そんな抑止力。いらない。ホントいらないよ抑止力なんて。

「凄い臭い老人の付き添いで徹夜明けなのに行かなくてはならないコンサート(会場が満員電車)」なんて状況の生き地獄だったら多分、死んでると思います。僕。

 

Noって言いたい。アメリカ人にでもなれば良いんでしょうか。ホントはもっと自由に生きたいだけなんです。うん。

 

 

 

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