
誤認逮捕、いわゆる冤罪というやつです。何も罪をおかしていない人を犯人と見誤ってしまったがために起こる悲劇なんですけど、これって逮捕と言う形を取らなければ日常茶飯事のことだと思うんですよ。
本当は秀才君の過失なのに、アリバイははっきりしている札付きのワルが何故か犯人だと決めつけられて糾弾されてしまう。しかも、アリバイが実証されて無罪が証明されたらされたで「素行が悪いからだ」という言葉で片付けられるだけ。なんだか納得がいかないですよね。ちゃんと謝って。ほら、ごめんなさいって。許してあげるから疑ったお詫びになんか頂戴、ってなとこですよ。
僕が九官鳥のキューちゃんを世話する時に叩いたりしていじめてるからって、全然関係ないインコが死んだのを突然僕のせいにされても困るんです。昨日まで風邪ひいて幼稚園休んでたのに、どうやって殺せと。僕じゃないのに。
「もう死んでしまったのだからそれは仕方ない、でも嘘をつくな」と怒られる僕。
調べたら分かるんです、ホントに休んでたんです、担任の先生に聞いたら分かるんです。確かにキューちゃんを叩いてたし、それが悪いことなのは認めますけれどもね、でも今回のそれと無理に結び付けようとしないで。ホント勘弁。途中、なんかホントに自分が殺したような気分になってたし。
万引きしたわけでも、本を破って悪戯したわけでもないのに、本屋のおじさんにとっ捕まったこともあります。
本屋を出た直後におじさんが小走りで追って来たんで、とっさに走って逃げてしまったんです。非常に怪しい。けれども。ね。
人間は追い掛けられれば逃げる生き物なんです。そういうもんです。
「何もしてないのになんで逃げたりしたんだ」って言われても、そらアンタが追ってくるからですよ。
街中で捕まってる僕を見た人は百発百中、万引き犯の逮捕劇だと思っていたに違いないんです。捕まった瞬間に僕の後ろを歩いてた、赤いニットのあのおばさんに説明して欲しい。彼女は真相を知らずに、捕まった瞬間しか見てないので絶対僕を万引き犯だと思ってるんです。ちょっと、お前。あのおばさんに説明して来いよ、と言えたらどれだけ良かったことか。
僕、こういう誤認逮捕、というか疑われることが何でだか結構多いです。
僕じゃないのに「田中君が消しゴムのカス投げてきます」とか先生にチクられたり。いや、本間君だから。僕じゃないから。
僕じゃないのに「美術室の工具を勝手に持ち出さないで下さい」とか先生から手紙が担任伝手に来たり。いや、犯人知ってるから。僕じゃないから。
僕は返却した覚えがはっきりとあるのに「田中君いい加減早く返却して下さい」と図書館から通達が来たり。あとになって、図書館内に安置されていたのが判明したら「田中君いつも返却遅れるからー」とか言って笑って済まされました。いや、ちゃんと謝って。担任は僕がまだ返してないと思ってるから。「田中君御免なさい、この前送った通達はこちら側のミスでした。図書館内にありました。御免なさい」って書いてうちの担任にまわしておいて。
誤認逮捕の困った点は、無駄に名誉が傷つけられる点なんです。ちゃんと最後のフォローを入れてくれないと困ります。
いつだったかに日記でも書いたオレオレ詐欺にしてもそうです。僕は祖母から金銭を巻き上げた記憶がないのに、「おばあちゃんが孫の声を聞き間違えるはずがない」という勝手な思い込みから糾弾される。犯人が見てたら腹抱えて大笑いですよ。はっはっはー上手いこと騙されちゃって。目論見通りことが運んでラッキーラッキー。
で、今ちょっと考えてついた誤認逮捕を防ぐためのすんごい方法があるんです。
警察が事件を公式発表するんです。テレビ、ラジオから新聞、果てには漫画雑誌なんかでもそのことを大々的に発表するんです。
まあそれだけじゃ今と全然変わらないんですけど、ここからがミソなんです。警察は、事件をなんかちょっと脚色して、犯人が逆上するような発表をして生放送の番組に「俺は、そんなんじゃないよ」と飛び込んで来るぐらいの嘘八百をまきちらすんです。
「犯行手口があまりにも幼稚だ。犯人の知能指数は平均的な8歳の女子児童並です」
「犯人の声明文は文章の構造が稚拙だ。犯人は中学もまともに卒業出来なかったはずです」
「畜生、俺は一流大学を卒業したんだ。馬鹿にすんなー」と表立って生放送番組に出て来たところを逮捕。早期解決で遺族もすっきり。
「検視結果により今回の宇田川町レイプ殺人事件の犯人は、性器が物凄く小さく勃起時でも僅か7cm程度であることが判明しました」
「犯人は不細工です」
「畜生、俺は小さくなんかねーぞー」と表立って生放送番組に出て来たところを、猥褻物公然陳列の罪科も付則されて逮捕。早期解決で遺族もすっきり、性欲絶大の女性視聴者はムラムラ。
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